2021年 02月 20日
創立70周年記念事業(越前和紙伝統工芸啓発推進活動)紙漉き事業
去る2月18・19日両日、越前市の「卯立の工芸館」にて紙漉き作業を実施した。越前和紙の歴史は現在の紙幣の礎となっており、明治新政府が紙幣の発行を試みた際、当県より職人が出向き、技術指導をしたとのことである。
現在、紙幣には人物・建物の肖像が「すかし」で入っているが、このすかし「黒透かし」という技法で、現在は紙幣にしか使用されていない技法であるそうだ。この技法を明治の時代に職人が指導し、大変高等技術であったため伝承が難しく紙幣に施すことにより、国家が保護伝承を買って出たのである。このことより、当地は「お札のふるさと」と呼ばれているそうだ。
今回は会員が育てたトロロアオイやコウゾを原料の一部に使用し本事業の集大成となる作業となった。
18日は前日からの降雪で厳しい寒さの残る中での作業となった。先ずは原料の説明と作業工程をご教授戴き、作業に入った。
見ると実際にやってみるのとでは大違いで、大変難しい作業であった。最初の段階で躊躇すると全体に行き渡らず穴が空いてしまうし、逆に勢いがありすぎると原料が入りすぎ塊となってしまう。均一に動かさなければ斑になってしまうなど繊細さと大胆さ、相反する行動の良い塩梅が必要とされた。
本事業を通して、伝統工芸の伝承の厳しい現状を、ほんの一部分ではあるが垣間見る機会を戴いた。後継者不足や原材料の確保が困難になるなどの状況下にあれども、絶やすことなく伝承の糸を紡いでこられた関係各位には脱帽である。この想いを次世代につないでいく必要性を再確認することが出来たことは、本事業の大きな収穫の一つとなったのではないだろうか。
氣比神宮 権禰宜 寺本孝義