2010年 03月 11日
書籍紹介『精霊の王』(著:中沢新一)
そう言えば、本年度は「書籍紹介」をしていないと思い至り、それならと少ししてみようと思う。
年々読書量が減ってしまい、昨年もそれ程、読書をしていない。それでも、振り返ってみて、昨年印象に残った本が数冊ある。その一冊が、この『精霊の王』である。
作者の中沢新一は、今更紹介するまでもなく有名な人類学者・思想家であり、数冊の書籍を上梓している。しかしながら個人的に、読まなければならないと思いながらも、十年ほど前に『日本人は思想したか』(吉本隆明と梅原猛と中沢新一、三人での対談形式の書籍)を読んだだけで、或る意味『精霊の王』が初めての一冊といっても良い。
では『精霊の王』の内容とは? 個人的な読解力に頼れば……日本において様々な神が祀られているが、それらの神々の更に奥に「後戸の神」とも呼ばれる原始的で古層の神が存在するのではないかという内容である。その神は「宿神」「石神」でもあり、中世でも国家の体系的な神道とは別に、各人の職業や技芸ごとの神として祀られてきた。また村の中心的な社ではなく、祠のようなところで祀られるのもこの神である。
本書では能の大家・世阿弥の娘婿の金春禅竹が記した『明宿集』を糸口に、猿楽の「翁」こそ宿神であり、そこから長い歴史の中で忘れ去られつつある古層の神の姿を照らし出そうとしている。
扱う内容が太古の神の話なので明確な真実には行き当たらないかもしれないし、難しい部分もあったが、非常に興味深くこの一冊を読む事が出来た。
そこで、今回は中沢新一著の『精霊の王』を紹介させていただいた。
【広報委員 松村典尚】
by fukuishinsei
| 2010-03-11 18:22
| それ知っとこ!